経済学?法律学研究

経済学?法律学研究からのアプローチ

75歳以上の地域高齢者のフレイルが将来の医療?介護費用に及ぼす影響

吉田 裕人  教授
経営法学部 経営法学科
吉田 裕人 教授

研究開始時の研究の概要

2018年3月に北海道美唄市において実施した高齢者健康調査(郵送調査)によりフレイルの有無を判定した75歳以上で介護保険認定を受けていない地域高齢者を前向きに追跡し、フレイル群と非フレイル群各群それぞれの医療?介護費用がどのように累積していくかを観察する。さらに、同様の調査を2022年度に実施し、75歳以上地域高齢者が非フレイルからフレイルに陥ることによる経済的インパクトを医療?介護費用を通じて算出する。また、介護予防を目的とした住民主体の教室活動などによるフレイル予防とその費用抑制効果を検証する。

研究実績の概要

本研究課題では、75歳以上の地域高齢者のフレイルが及ぼす影響を主に医療?介護費用をアウトカムにして調べ、その予防による費用抑制などを検証する。

2020年度においては、当初の計画通り、対象者の総死亡?新規介護保険認定(もしくはサービス利用者)状況、年度ごとの医療?介護費用データの新規取得を実施した。すなわち、2018年3月に美唄市在住の75歳以上地域高齢者を対象として実施したアンケート調査から得た健康情報(フレイルの有無、住民主体の介護予防教室への参加の有無の他、既往歴、生活習慣など)に医療?介護費用情報などが2018年12月分まで結合されているデータセットに、2019年1月~2020年12月分の新たな上記データを追加した。

今後、フレイル、非フレイル両群において上記データを比較し、性?年齢などを調整したフレイルの独立的な経済的インパクトを明らかにしていく予定である。

なお、コロナ禍によって地域高齢者の受療行動に影響が出ていると推測され、フレイルの地域高齢者の医療?介護費用に及ぼす独立的な影響を評価するためには、研究対象者のコロナ禍における生活の変化などの情報が必要である。2020年度、美唄市研究フィールドにおいて共同研究者であった鹿児島大学の牧迫飛雄馬教授より打診を受け、美唄市在住の地域高齢者のコロナ禍における生活様式の変化に関するアンケート調査実施に協力した。すなわち、2018年3月に美唄市で実施したアンケート調査に回答し、以後の研究協力に同意を得ている本研究課題の研究対象者を対象として本アンケートは実施された。牧迫教授の研究グループや美唄市と本データ共有の同意も得ており、今後本研究課題のデータセットに追加し、コロナ禍における地域高齢者の受療行動の変化も加味した分析を行っていく予定である。