2016年12月8~11日汚染土壌からの放射線が周辺建築環境に及ぼす影響に関する調査研究
教員の活動
汚染土壌からの放射線が周辺建築環境に及ぼす影響に関する調査研究
建築環境学科 野﨑淳夫教授、一條佑介講師/2016.12.8?11
福島第一原子力発電所の事故(以下、原発事故) による放射能汚染の影響を把握するために、これまで多くの調査?研究が行われてきたが、建築空間内と屋外の関係性を明確にした報告や分析的に評価した資料は少ない。被災地域では、宅地周囲の汚染状況に加え、土地利用や地形特性の違いが建築空間内の放射線量率分布に影響を及ぼす可能性がある。また、建築物を構成する建材によっても建築空間内の放射線量率分布は異なってくる。被災地域で建築計画を行う場合には、建物周囲の汚染状況を明らかにし、これに応じた建築的配慮による放射線防護等の対策が期待される。
本研究では、原発事故由来の放射能汚染が建築空間の放射線空間線量率に与える影響のメカニズムを明らかにすること及び、空間内放射線量率を予測する手法を確立することを目的とする。筆者らは、これまでにも、住宅を対象として屋内?外 の放射線量率の測定等を行ってきたが、本報では、土壌汚染状況と周辺建築環境に及ぼす影響を より詳細に把握することを目的とし、福島県郡山市の逢瀬川堤防の法面と河川沿いの RC 建築を対象に行った実測について報告する。
福島県郡山市の逢瀬川堤防の法面(以下、屋外)と逢瀬川沿いに位置する三階建ての RC 建築(以下、屋内)を対象にガンマ線空間線量率及び土壌の放射能濃度を測定した(図-1、2参照)。
空間線量率は、NaI(Tl)シンチレーション式 サーベイメータ、NaI(Tl)スペクトロメータにより測定しガンマ線空間線量率 (Sv/h)及ひ?スペクトルを得た。土壌の放射能濃 度は、Ge 半導体検出器(オルテック:GEM20-70) により分析した。土壌サンプルは、測定箇所毎に 1 m四方の5点(対角線上4点とその交点1点) て?、地表から 5 ~10 cm の深さを採取し、深さ毎に十分に混合した。
実測結果として、河川区域内の法肩からの斜面距離と測定高さ別 の空間線量率および土壌の放射能濃度について、それぞれ図-3、図-4 に示す。 1) 河川区域内の空間線量率は、いずれの地点においても国が示す除染基準の 0.23 μSv/h を上回った。尚、河川区域外では 0.16 μSv/h 程度であった。また、測定位置により線量分布が異なり、それぞれの位置の特性に よりかなりばらつきがあることが推察される。2) 土壌の放射能濃度も同様に測定位置で異なる汚染傾向を示している。右岸 A 法肩付近は、雨の効果によって川裏から汚染物質が流れ込み、特異点になっている可能性がある。また、右岸Aで深度別に採取した結果より、放射能は表層5 cm に70~ 80 %、5~10 cmに全体の 20~30 %か?含まれており、表層5 cmよりさらに地中へ拡散していることを確認した。
また、測定点 A の高さ別ガンマ線スペクトルを図-5 に示す。測定点 A は RC の手すりを備えたバルコニーになっており、河川を望む FL+1,100 mm て?は Cs 137の全吸収ピーク(662 keV)が確認されるが、FL+650 mmでは、コンクリートの手すりによる遮へい、散乱効果により、Cs 137 のカウント数が減少している。また、住宅内の空間線量率は0.08~0.1 μSv/hである。スペクトル計測を行うことにより、線量率計測のみでは判断しにくい原発事故由来の影響を確認できた。
建築環境学科 野﨑淳夫教授、一條佑介講師/2016.12.8?11
福島第一原子力発電所の事故(以下、原発事故) による放射能汚染の影響を把握するために、これまで多くの調査?研究が行われてきたが、建築空間内と屋外の関係性を明確にした報告や分析的に評価した資料は少ない。被災地域では、宅地周囲の汚染状況に加え、土地利用や地形特性の違いが建築空間内の放射線量率分布に影響を及ぼす可能性がある。また、建築物を構成する建材によっても建築空間内の放射線量率分布は異なってくる。被災地域で建築計画を行う場合には、建物周囲の汚染状況を明らかにし、これに応じた建築的配慮による放射線防護等の対策が期待される。
本研究では、原発事故由来の放射能汚染が建築空間の放射線空間線量率に与える影響のメカニズムを明らかにすること及び、空間内放射線量率を予測する手法を確立することを目的とする。筆者らは、これまでにも、住宅を対象として屋内?外 の放射線量率の測定等を行ってきたが、本報では、土壌汚染状況と周辺建築環境に及ぼす影響を より詳細に把握することを目的とし、福島県郡山市の逢瀬川堤防の法面と河川沿いの RC 建築を対象に行った実測について報告する。
福島県郡山市の逢瀬川堤防の法面(以下、屋外)と逢瀬川沿いに位置する三階建ての RC 建築(以下、屋内)を対象にガンマ線空間線量率及び土壌の放射能濃度を測定した(図-1、2参照)。
空間線量率は、NaI(Tl)シンチレーション式 サーベイメータ、NaI(Tl)スペクトロメータにより測定しガンマ線空間線量率 (Sv/h)及ひ?スペクトルを得た。土壌の放射能濃 度は、Ge 半導体検出器(オルテック:GEM20-70) により分析した。土壌サンプルは、測定箇所毎に 1 m四方の5点(対角線上4点とその交点1点) て?、地表から 5 ~10 cm の深さを採取し、深さ毎に十分に混合した。
実測結果として、河川区域内の法肩からの斜面距離と測定高さ別 の空間線量率および土壌の放射能濃度について、それぞれ図-3、図-4 に示す。 1) 河川区域内の空間線量率は、いずれの地点においても国が示す除染基準の 0.23 μSv/h を上回った。尚、河川区域外では 0.16 μSv/h 程度であった。また、測定位置により線量分布が異なり、それぞれの位置の特性に よりかなりばらつきがあることが推察される。2) 土壌の放射能濃度も同様に測定位置で異なる汚染傾向を示している。右岸 A 法肩付近は、雨の効果によって川裏から汚染物質が流れ込み、特異点になっている可能性がある。また、右岸Aで深度別に採取した結果より、放射能は表層5 cm に70~ 80 %、5~10 cmに全体の 20~30 %か?含まれており、表層5 cmよりさらに地中へ拡散していることを確認した。
また、測定点 A の高さ別ガンマ線スペクトルを図-5 に示す。測定点 A は RC の手すりを備えたバルコニーになっており、河川を望む FL+1,100 mm て?は Cs 137の全吸収ピーク(662 keV)が確認されるが、FL+650 mmでは、コンクリートの手すりによる遮へい、散乱効果により、Cs 137 のカウント数が減少している。また、住宅内の空間線量率は0.08~0.1 μSv/hである。スペクトル計測を行うことにより、線量率計測のみでは判断しにくい原発事故由来の影響を確認できた。