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総合政策学部 総合政策学科

キーボードは苦手!

総合政策学部准教授 河本 進


私は、総合政策学部でWordやExcelなどのコンピューターリテラシーを教える講義を担当している。21世紀になって以来、『ゆとり教育』による大学生の基礎学力の低下問題が指摘されているが、この時代の情報化社会の発展に伴う初等?中等教育の改革や家庭へのパソコンの普及によって、大学入学時のコンピューターリテラシーの能力に関しては、向上してきていることを、文書を入力する課題を課すたびに感じている。大学入学前に、キーボードすら使ったことがなかった私と比較したら雲泥の差である。

私が大学に入学したのは、今とは違って学校や家庭にパソコンが普及していなかった時代である。それゆえ、キーボードを使って初めて文字を入力したのは、大学2年生の時に履修した『電子計算機演習』という講義の中でプログラミング言語を学んだときであった。この授業では、毎回、演習課題のプログラムを書く必要があったのである。キーボードの配置を覚えていない私は、プログラムを書くのに友人と一緒に「aはどこ?」、「bはどこ?」などと言いながら、英数字を右手の人差し指だけを使って1文字ずつ入力していったことを今でも覚えている。幸運なことに、この講義は筆記試験で単位を認定したので、単位は無事に修得することはできたが、キーボードの入力は最後まで身に付かなかった。キーボードによる入力作業にうんざりしていた私は、その後、キーボードによる入力が必要な科目を履修することはなかった。

次に、キーボードと出会ったのは、大学院の博士前期課程(修士課程)を修了後、本学の教員になる前に一般企業に就職をしたときである。私が就職したのは、企業が事務仕事を行うのにパソコンを使い始めた頃で、会社の中には、パソコンによる文書と手書きによる文書が混在していた。このような時代だったので、私が上司に任された初仕事は、

         「この文書、明日必要だからパソコンで入力して」

というものであった。入力を頼まれた文書は、学生時代から進歩していない私の入力速度では、徹夜しても入力が終わらない分量であった。結局、この仕事は、私の入力速度の遅さを見兼ねた先輩の手を借りて仕上げることになった。仕事をするうえで、最低限の入力能力を身に付ける必要性を感じた私は、翌日から休み時間を使って文書入力の練習をするようになった。

社会に出るまでキーボードすらまともに使えなかった私が、大学でコンピューターリテラシーを教えているのだから不思議なものである。大学入学時に学力不足や知識不足を感じている学生もいるとは思うが、勉強する意欲さえあれば大学生活の4年間でいくらでも勉強できる。学生諸君には、社会に出るまでの間に色々なことを学んで卒業していってもらいたい。