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総合政策学部 総合政策学科

佐渡ロングライド210

総合政策学部 講師  淡路智典


以前の国見テラスにロードバイクに乗ることが趣味であると書いた。その中で、最も印象に残ったイベントである佐渡ロングライドの思い出について語りたい。

ロングライドは、順位やタイムを競うものではなく、長距離を自転車で走り、完走を目指すイベントである。佐渡ロングライドは、その中でも特に長い距離を走るものであり、最長コースは日本最大の島である佐渡ヶ島を1日で1周する210kmという、日本でも数少ない200kmを越えるイベントである。

距離の長いロングライドイベントは、大体早朝からはじまる。安全確保のために、日没時間より前を制限時間とすることが多いので、必然的に早くなる。当日は4時台に起床し、早めに朝食をとり、自転車に乗る準備をして、出発地点に向かう。多少、肌寒さを感じる朝6時がスタートの時間となる。3000人以上が参加するイベントなので、一斉にスタートすると混雑するため、安全のために数十人ずつ分散してスタートさせる。いよいよ自分の番がまわってくる。朝の気持ちのよい空気の中、海岸沿いの道を走る。大きいサイクルイベントに参加すると、沿道の人達が声をかけてくれたりする。210kmの道のりには当然、平坦な道もあれば、きつい坂道もある。走りやすい道もあれば、走りにくい道もある。だらだらと続く長い坂道を走っていると、何で自分は望んでこんな辛い思いをしながら自転車に乗っているのだと思うこともある。佐渡ロングライドには、チェックポイント毎に制限時間が決まっており、制限時間を越えるとリタイアとなる。最終的には12時間以内にゴールにたどり着ければ完走となる。私はあまり速くないため、チェックポイント毎に制限時間ぎりぎりであった。100km走ってもまだ半分すら行っていないという事実に打ちのめされそうにもなった。200km近く走った後に、長い上り坂があった時には、リタイアしたらどんなに楽だろうと思うこともあった。色々な思いをしつつ、最後の気力を振り絞り、制限時間の5分前にゴールすることができた。

完走直後は、ほとんど動けない状態であったが、何物にも代えがたい達成感があった。ペダルを1回だけ回すことは誰でもできる。しかし、自転車は自分の意思でペダルを回さない限り進まない。小さな行為はあるが、それを自分の意思で10回、100回、1000回、10000回と積み重ねて、途方もない距離を進むことができた。その事実が達成感につながったのだろう。

一つひとつの小さな積み重ねが大きなものにつながるという事実は、自転車以外のことにも通じているように思う。新しい生活が始まる新年度にあたり、学生達も何か目標を見つけ、それに向けて一つひとつ積み重ねていって、大きなものを達成できるように過ごしてもらえばと願っている。