「総合政策」という道標
総合政策学部 講師 石田 裕貴
総合政策学部の1年生配当の必修科目に、その名も「総合政策」という科目がある。漠然と総合政策のイメージを持って入学してきた新入生に対して、カリキュラムの全体像を示し、どのように専門科目を体系的に学んでいけばいいのか、考えてもらう科目である。「総合政策」の具体的な授業内容は年によって異なるが、昨年と今年については各教員に毎回「~への誘い」というタイトルで、担当する専門科目の概要などを講義していただいている(「~」の部分には各教員の代表的な専門科目名が入る)。そして、私は教務委員という役職の関係上、この科目の取りまとめ役として、新入生に交じって「総合政策」を「受講」している。
毎回の講義は千差万別である。学問体系の中で自分の科目を関係付ける、ミニ講義を行う、世間で話題になっているトピックを題材にする、自分の研究?職業経験を語る、など多彩である。教員の専門科目に応じて内容や形式が異なるのは当然であるが、それでも各教員がどのような考えにしたがって教育をしているのかが透けて見えるようで、興味深い。教職に就いた後に、他の教員の授業を聴講する機会はほとんどないので、教歴の浅い私には参考になることばかりである(例えば、多くの教員が大講義室の授業でも学生を当てて発言させていたのには驚いた。私は自分の性格や経験に照らして、教室の規模が大きいときには、受講生に緊張を与えてしまうと遠慮しているのだが…)。
私も自分の担当回では「金融論への誘い」を講義する。昨年は要領を得ず、随分独りよがりな内容にしてしまったと反省している。講義のハイライトとして、銀行を経由するお金が世の中をぐるぐる回る様子(専門的には「信用創造」という)を描こうと、(普段の授業では使いもしない)エクセルのスライドを見せながら講義した(これがいけなかったのであろう…)。金額がどんどん積み上がっていく状況を、具体的な数字でイメージしてもらえるはずだったが、新入生はあまりピンときていないようだった。さて、今年度はどのような内容にしようか…
入学早々の専門科目を本格的に学び始める前に、教員とその専門科目の特徴を知ってもらう機会は、新入生にとって貴重である。改めて、総合政策学部には多種多様な人材と科目がそろっていると思う。カリキュラムという森に分け入り、新入生が進むべき方向をしっかりと定める上で、「総合政策」は最初のよい道標になるであろう。